CONLANG COMPETITION

zurück Liste vor

第3回人工言語コンペ参加言語

お題

百人一首を訳す、ただし、直訳である必要はない。新たな詩歌形態を考案したり、架空文化にのっとった意訳してもかまわない。

提出作品

お題が訳詞なので語彙は基本的にノルウェー語のアポステリオリにすることで縛りプレイを楽しむ。文法はノルウェー語を改変、拡張する。基本はSVO, NAの主格対格言語。言語名はliediskとする。由来はドイツ語のLied歌。

定型詩

3音節2行、7音節2行の4行とする。初めの3行は三三七拍子のリズムになる。後半の2行は和歌の下の句と一致する。

訳詞と語釈

諸事情により5首のみ。

1 秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ
Het er høst. ヘータルヘスト
Der ses gård. ダーシェスゴート
Her står hytte, sin tak grov. ハーシュトーリュッテ スィンタークグローヴ
Det lar ermen være våt. デーラーラルメン ヴァーレヴォット

het 形式主語、日時や天候を表す
er be動詞現在形
høst 秋
der そこ
ses 見える
gård 農場
her ここ
står 建っている
hytte 小屋
sin 三人称所有代名詞
tak 屋根
grov 荒い
det 指示代名詞
lar させる
ermen 袖
være be動詞不定形
våt 濡れた

2 春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
Het vært vår, ヘーヴァートヴォール
Dan sommer. ダンソンメル
Hvitt ses kluter, som luftes. ヴィッセスクルータル ソムフテス
Der gjøres det på fjellet. ダールヨーレスデー ポーフィェッレ

het 形式主語
vært be動詞の過去分詞
vår 春
dan そして
sommer 夏
hvitt 白い
ses 見える
kluter 衣服
som 関係代名詞
luftes 干してある
der そこ
gjøres 代動詞、luftesと同意
det 指示代名詞
på 前置詞
fjellet その山

3 あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む
Lang som fugl ラングソムフール
Sin hale, スィンハーレ
Slik kveld som er lang som det, スリッククヴェルソムアル ラングソムデー
Skal jeg sove med ingen. スカルヤイソーヴェ メーインゲン

lang 長い
som ~のように
fugl 鳥
sin 所有代名詞
hale 尾
slik そんな
kveld 夜
som 関係代名詞
er be動詞現在形
det 指示代名詞
skal 未来の助動詞
jeg 一人称単数主格代名詞
sove 眠る
med ~と共に
ingen 誰もいない

4 田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ
Der går jeg ダールゴールヤイ
Til stranda. ティルストランダ
Det ses hvite fjellet høyt. デーセスヴィーテ フィエッレホイト
På det høyte er het snødd. ポーデーホイテ アルヘースネッド
der そこ
går 行く
jeg 一人称単数代名詞
til 前置詞、~へ
stranda 浜
det 形式主語
ses 見える
hvite 白い
fjellet 山
høyt 高い
på 前置詞、~に
det 指示代名詞
høyte 副詞、高いところに
er be動詞現在形
het 形式主語、日時や天候を表す
snødd 降雪の過去分詞

5 奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき
I fjell langt イフィェルラングト
Falt blader. ファルトブラーデル
Til der går jeg, høres hjort ティルダールゴールヤイ ヘーレスヒョート
Sin stemme lar høst syns fin. スィンスティンメラール ヘストスィンスフィン
i 前置詞、~で
fjell 山
langt 遠く
falt 落ちるの過去分詞
blader 葉の複数形
til 前置詞、~へ
der そこ
går 行く
jeg 一人称単数代名詞
høres 聞こえる
hjort 鹿
sin 所有代名詞
stemme 声
lar ~させる
høst 秋
syns ~と思える
fin すばらしい

文法説明

1

Het er høst. - It is autumn.
季節はhetを形式主語にして表す。
Der ses gård. - there seen farm
derは未知の事物を導く副詞。特に訳す必要はない。
sesはse見るの受動態だが、liediskでは自動詞になる。
gårdは農場の単数形。不定冠詞は使わず無票とする。sesの主語だが文頭に副詞が来たので動詞の後ろに下がる。動詞は文中の第二位に固定。
Her står hytte, sin tak grov. - Here stands cotage, its roof rough.
herは未知の事物を導く副詞。der「そこ」とは異なり作者のいる場所の「ここ」を表す。
stårは「立っている」だが建物の場合は「建っている」も表す。
hytteは小屋。無票なので単数形。stårの主語。
sin 所有代名詞。
hytte, sin 名詞に所有代名詞を後置して二語で所有格を表す。hytte sinなら「小屋の」の意。ただしコンマで区切るので「ここに小屋が建っている。その小屋の~」と続く。
tak 屋根。
grov 荒い
tak grov 形容詞は名詞の前に来るが、名詞に後置することで名詞文の意味を表す。即ち、grov takなら「荒い屋根」だがtak grovは「屋根、その屋根は荒い」となる。
Det lar ermen være våt. - That let the sleeve be wet.
det 指示代名詞。この場合は「荒い屋根」または「屋根が荒いこと」を表す。
lar 英語のlet。lar+名詞+動詞で「~に~させる」となる。
ermen 袖ermeの定形。原詩では「私の袖」で特定できるので定形にする。
være be動詞の不定詞。
våt 濡れている。lar ~ være våt で「濡れた状態を持続させる」の意。

季節は秋。田んぼが見える。ここに小屋が建っている。その小屋の屋根は荒い。そのせいで袖が濡れている。

2

Het vært vår, - It been spring
hetは季節を表す形式主語。
værtはbe動詞の過去分詞。liediskでは過去分詞単独で完了時制を表す。
vårは春。季節名は無票。
Dan sommer. - then summer.
danはノルウェー語のsidenから。「そして」「~のあとで」の意。
sommerは夏。無票。
Hvitt ses kluter, som luftes. - white seen cloths, that aired
hvittはhvit「白い」の中性単数形。
sesはse「見る」のs受動態で、liediskでは自動詞「見える」の意。
kluterはklut「衣服」の複数形。
hvitt ses kluterは普通の語順ではhvite kluter sesだが、初めは「何かわからないが白い物が目に入る」という意味で中性単数形のhvittが文頭に立つ。動詞の後ろに白い物の正体が来る。
somは関係代名詞。
luftesはluft「乾かす」「干す」のs受動態。「干してある」。
Der gjøres det på fjellet. - There done that on the mountain.
derは未知の事物を導く副詞。一方で、白い衣類が干してある場所も表す。
gjøresは代動詞gjøreのs受動態。detは前の文を受ける指示代名詞。gjøres detで「それがなされる」。つまりは白い衣類が干してあること。
påは場所を表す前置詞。
fjelletはfjell「山」の定形。天香具山という固有名詞なので定形になる。

春が終わり、そして夏。白いものが見える。白い衣類が干してある。干してある、あの山に。

3

Lang som fugl - long as bird
Sin hale, its tail
Slik kveld som er lang som det, such night that is long as it
Skal jeg sove med ingen. should I spleep with nobody?
langは長い。somは英語の原級比較のasと同じ。fuglは鳥。無票。
sinは所有代名詞。haleは尾。
二行に分かれているが一続きでlang som fugl sin hale で long as bird's tailの意。名詞に所有代名詞が続くと所有格を表す。
slikはsuch。slik kveldで「そんな夜」
somは関係代名詞。この場合は主格。先行詞は夜。
som er lang som detの初めのsomは関係代名詞で後のsomは比較のas。detは鳥の尾を受ける。
skalは未来の助動詞。この場合は「~することになる」「~しなければならない」の意。
ingenは「誰も~ない」の不定代名詞。

鳥のように長い、その鳥の尾のように長い、そんな夜を、誰も連れ添ってくれる人もいなくて寝ることになるのだろうか。

4

Der går jeg - there go I
Til stranda. - to the beach
Det ses hvite fjellet høyt. - seen white mountan high
På det høyte er het snødd. - on that high, is it snowed
derは未知の事物を導く副詞、går jegはI goで動詞の位置が文の第二位に来るよう語順が入れ替わっている。
tilは方向を表す前置詞で英語のtoに相当。
strandaはstrandの定形。田子の浦という固有名詞を受ける。
detは形式主語で特に訳す必要はない。sesはse「見る」のs受動態でliediskでは自動詞「見える」。
hvitt fjellで「白い山」だが、山は富士山という固有名詞を受けるので定形のfjelletになる。形容詞がhvittではなくhviteになっているのは定形のfjelletに合わせたもの。liediskの拡張文法で、前置定冠詞は用いない。
fjellet høytと形容詞を後置することで名詞文「その山は高い」の意を含む。
på det høyteはliedisk拡張語法による副詞句。på detは「そこで」だが副詞に語尾-eを付したものを続けることで場所を限定する効果がある。「そこで、その高いところで」の意。
副詞句が文頭に来たので次に動詞、三番目に主語が来る。普通の語順はhet er snødd。liediskでは過去分詞単独で完了時制を表すが、その場合は完了形の完了用法になる。be動詞とともに使うことで継続用法になり「ずっと降っている」の意になる。

その浜に行くと白いあの山が見える。その山は高い。その高いところに雪が降り続いている。

5

I fjell langt - In mountain far
Falt blader. - fallen leaves
Til der går jeg, høres hjort - to there go I, heard deer
Sin stemme lar høst syns fin. - its voice let autumn seems fine
iは場所を表す前置詞。i fjellで「ある山で」。langtは形容詞「長い」の中性単数形ではなく、それから転じた副詞で「遠く」の意。
faltは「落ちる」の過去分詞。liediskでは単独で完了形になる。bladerは「葉」の複数形。落ち葉がたくさんある様子を表す。
til derが副詞句で、落ち葉がたくさんある山を表す。går jegは主語と動詞の倒置。
høresは「聞く」のs受動態でliediskでは自動詞「聞こえる」。主語はhjort「鹿」。
sin stemme は「その声」。前の文から続いてhjort sin stemmeだと「鹿の声」となるが、ここは文がいったん切れているので「名詞+所有代名詞」の所有格ではなく、所有代名詞単独の用法。
larは英語のletで後続の名詞に何かをさせる。
høst syns finがlarのさせる内容。høstは秋、synsは「~のように思える」、finは英語のfineで「すばらしい」など。
実はsynsはsynesの現在形なのでlar+名詞+動詞不定詞の構文では誤りだが、synesにすると定型詩の音節数に治まらないので黙っていれば誰も気付かないことにしておく。

遠くの山に、落ち葉が積もり、そこに行くと、鹿が聞こえる。その声が秋はええなと思わせる。

über… Liste neu einfügen